たりたり – MARKET PASS https://market-pass.jp 実用的な投資・キャリア情報にアクセス Mon, 08 Aug 2022 07:37:42 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.1 198286927 【PEP銘柄分析】ペプシコの株価・事業内容・強み・弱みを解説 https://market-pass.jp/toshi/usstock/5027/ https://market-pass.jp/toshi/usstock/5027/#respond Sun, 03 Apr 2022 12:10:27 +0000 https://market-pass.jp/?p=5027 ペプシコの株価

※スマートフォンの場合、画面を横にすると競合の株価状況が表示されます

会社名PepsiCo Inc
代表者Ms. Indra K. Nooyi
本社700 Anderson Hill Road Purchase, NY 10577 USA
設立年1919年9月
業種一般消費財
社員数264,000名
HPhttps://www.pepsico.com/

ペプシコの財務状況

直近の財務状況

※損益計算書は直近12ヶ月

売上高の推移

出所:pepsico-inc-2021-annual-report

地域別売上構成比

出所:pepsico-inc-2021-annual-report

【ペプシコの地域別売上構成比】

  • 北米:60%
  • 南米:10&
  • 欧州:16%
  • AMESA:8%
  • APAC:6%

AMESA=アフリカ、東南アジア
APAC=その他アジア、豪州、中国

ペプシコの事業内容

出所:pepsico-inc-2021-annual-report

【ペプシコの事業内容】

  • FLNA(スナック菓子事業)
  • QFNA(シリアル事業)
  • PBNA(飲料事業)
  • Latin America(南米事業)
  • Europe(欧州事業)
  • AMESA(アフリカ事業)
  • APAC(豪州・アジア事業)

FLNA(スナック菓子事業)

FLNA(Frito-Lay North America)事業は次のように定義されています。

Frito-Lay North America (FLNA), which includes our branded convenient food businesses in the United States and Canada

「FLNA事業は、北米(アメリカとカナダ)にてスナック菓子を提供しているビジネスです」

pepsico-inc-2021-annual-reportより意訳

売上高でみればFLNA(スナック事業)はPBNA(飲料事業)に次いでいますが、営業利益では圧倒的な1位であり、同社の中核事業と言えます。

出所:pepsico-inc-2021-annual-report

経済活動の再開に伴い外出や外食の機会が増え、映画館、テーマパークなどの娯楽施設が営業再開し、スナック菓子の売上が回復しつつあります。

営業施設の再開度合い、活況度合いが今後の事業に影響を与えそうです。

QFNA(シリアル事業)

QFNA(Quaker Foods North America)事業は次のように定義されています。

Quaker Foods North America (QFNA), which includes our branded convenient food businesses, such as cereal, rice, pasta and other branded food, in the United States and Canada

「QFNA事業は、北米(アメリカとカナダ)にてシリアルや米、パスタなどを提供しているビジネスです」

pepsico-inc-2021-annual-reportより意訳

健康志向の高まりからQFNA事業で提供しているシリアルへの需要は強まっており、着実に売上高を増やしています。

しかし、そのペースは遅く、事業環境的には追い風でありながらも、同事業の売上高はペプシコの事業の中で最小です。今後同分野でM&Aや大型投資があってもおかしくないですね。

PBNA(飲料事業)

PBNA(PepsiCo Beverages North America)事業は次のように定義されています。

PepsiCo Beverages North America (PBNA), which includes our beverage businesses in the United States and Canada

「PBNA事業は、北米(アメリカとカナダ)にて飲料を提供しているビジネスです」

pepsico-inc-2021-annual-reportより意訳

世界的に有名な「ペプシコーラ」や、日本でもファンの多い「トロピカーナ」だけでなく、スポーツドリンクやミネラルウォーターも販売しており、およそ1,000種類の商品を扱っています。

炭酸飲料水を除いた飲料業界シェアは世界1位であり、近年は炭酸飲料以外の商品強化などが目立ちます。

また、新興国を成長ドライバーとするコカ・コーラとは対照的に米国での成長がメインとなる見通しです。

Latin America(南米事業)

南米事業は次のように定義されています。

Latin America (LatAm), which includes all of our beverage and convenient food businesses in Latin America

「南米事業は、南米にて飲料やスナック菓子などを販売しているビジネスです。」

pepsico-inc-2021-annual-reportより意訳

南米事業の事業規模についても記載があります。

PepsiCo Latin America sells beverages, food and snacks throughout the region employing more than 70,000 employees in 34 countries and generating $7.2 billion dollars in sales. 

「ペプシコの南米事業は、南米諸国に飲料・スナック菓子を提供し、社員数7万人、販売国数34、売上高72億ドルを誇っています。」

ABOUT THE COMPANYより意訳
出所:pepsico-inc-2021-annual-report

また、北米を除いた事業では営業利益ベースで最も優秀な事業であり、ペプシコの利益の10%を稼いでいます。

Europe(欧州事業)

欧州事業は次のように定義されています。

Europe, which includes all of our beverage and convenient food businesses in Europe

「欧州事業は、欧州にて飲料やスナック菓子などを販売しているビジネスです。」

pepsico-inc-2021-annual-reportより意訳
出所:pepsico-inc-2021-annual-report

ペプシコはAnnual Reportにて各地域の飲料・食料の販売割合を公表しているのですが、欧州事業は最もバランス良く販売されていることがわかります。

AMESA(アフリカ事業)

アフリカ事業は次のように定義されています。

Africa, Middle East and South Asia (AMESA), which includes all of our beverage and convenient food businesses in Africa, the Middle East and South Asia.

「アフリカ事業は、アフリカ、東南アジアにて飲料やスナック菓子などを販売しているビジネスです。」

pepsico-inc-2021-annual-reportより意訳

ドバイに本社を置く同事業ですが、ペプシコは、コカコーラとは異なり新興国に注力する姿勢は弱いため、地域の経済成長に対して同事業は拡大できていません。

APAC(豪州・アジア事業)

豪州・アジア事業は次のように定義されています。

Asia Pacific, Australia and New Zealand and China Region (APAC), which includes all of our
beverage and convenient food businesses in Asia Pacific, Australia and New Zealand, and China region.

「豪州・アジア事業は、豪州、中国やその他アジア諸国(東南アジア除く)にて飲料やスナック菓子などを販売しているビジネスです。」

pepsico-inc-2021-annual-reportより意訳

豪州・アジア事業は地域の有力ブランドと連携することで事業を大きくしてきました。ユニリーバなどと連携したことで紅茶やフルーツジュース市場にもアクセスしてきました。

ペプシコの強み

【ペプシコの強み】

  • 飲料・食品業界でのトップシェアとブランド力
  • 積極的なM&A戦略
  • バランスの取れたポートフォリオ
  • DSD物流システム

飲料・食品業界でのトップシェアとブランド力

ペプシコは飲料・食品業界でトップシェアを誇っており、展開しているブランドは世界的な認知度を誇っています。

製造業とは異なり景気動向に大きな影響を受けない業態であり、安定的な収益を生み出せることから規模の経済性を生かした経営活動を行っています。

また、Forbesの「The World’s Most Valuable Brands2020」では、StarbucksやZARAを抑えて36位となっています。

出所:Forbes

知名度と規模を生かした戦略が可能となっています。

積極的なM&A戦略

ペプシコは、強固な財務基盤を活かし、M&Aを積極的に行っています。

2018年8月にはソーダメーカー製造大手の「ソーダストリーム」を、2019年7月には南アフリカの飲料・食品大手のパイオニアフーズ、そして2020年にはエナジードリンクメーカーの「ロックスター」を、それぞれ数千億円規模で買収しています。

また、買収だけでなく売却に関しても機動的に行っています。2021年8月には「トロピカーナ」などを含む北米のジュース事業を約3,600億円で売却。

M&Aを駆使して加速度的に事業規模を拡大、またはスリム化させることで、市況にあったビジネスを展開しています。

バランスの取れたポートフォリオ

ペプシコの事業ポートフォリオのバランスはとても良く、一つの商品や地域に依存していないことがわかります。

出所:pepsico-inc-2021-annual-report

ペプシコは、Pepsi, Diet Pepsi, Fritosなど、売上ベースで10億ドルを超す商品を20ブランド以上保有しています。

仮に一つの商品に競合が現れたとしても、全体収益にはさほど影響がない体制を構築できているのです。

DSD物流システム

ペプシコは、物流システムとしてDSD(Direct Store Delivery)を採用しています。

DSDとは?

貨物の納期・緊急度に併せて、お客様に最も近い生産拠点からの集荷し、直接配送先まで届ける配送サービスのこと。

DSDによって、仕入れや広告を機動的に行うことができる。

インフルエンサーによる宣伝や一時的なブームによって、スナック菓子や飲料水は爆発的に販売されることがあります。しかし、物流網が複雑だと仕入れに時間がかかってしまい、機会損失が発生してしまいます。

DSDであれば需要に対応する形で供給できるため、機会損失をなくすることができます。

ペプシコの弱み

【ペプシコの弱み】

  • 健康志向の高まりによる炭酸飲料の消費鈍化
  • 砂糖税などの政策的な逆風

健康志向の高まりによる炭酸飲料の消費鈍化

健康志向が高まることで、ペプシをはじめとする炭酸飲料水の需要が少しずつ弱まっています。流石に時代の流れには逆らえませんね。

しかし、ミネラルウォーターやシリアルなどの健康志向者向けの商品を拡充させており、しっかり時代に対応していく姿勢が見て取れます。

とはいえ、現状は売上のほとんどが炭酸飲料やスナック菓子なので、健康商品ビジネスをより積極化していく必要はありそうです。

ソーダ税などの政策的な逆風

米国の一部の州では、炭酸飲料水などの人工甘味料を含む飲料に課税する「ソーダ税」を導入しています。

米ペンシルベニア州フィラデルフィア(Philadelphia)市当局が2017年に導入を決定した砂糖や人工甘味料を含む飲料への課税により、これら製品の売り上げが38%減少したとする調査結果が発表された。

AFP BB News

記事にあるようにソーダ税の導入は炭酸飲料水に直接的に影響するので、今後は米国や他の国々で導入されるかどうか注意する必要があります。

ペプシコの大株主

株主名比率%
The Vanguard Group, Inc.8.44%
BlackRock Fund Advisors4.73%
SSgA Funds Management, Inc.4.26%
Geode Capital Management LLC1.67%
Wellington Management Co. LLP1.37%
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【銘柄分析】テキサスインスツルメンツ(TXN)のビジネスモデル・競争優位・リスク https://market-pass.jp/toshi/usstock/2919/ https://market-pass.jp/toshi/usstock/2919/#respond Fri, 28 Jan 2022 14:18:58 +0000 https://market-pass.jp/?p=2919 テキサスインスツルメンツ(TXN)の銘柄概要
会社名Texas Instruments Inc.
代表者リッチ・テンプルトン
設立年1930年
本社米国テキサス州
業種半導体

テキサスインスツルメンツはアナログ半導体の製造・販売を行う企業

アナログ半導体業界ではシェア20%で1位の座を占めている。テキサスインスツルメンツの顧客は、同社の製品のカバー範囲が非常に広いため、多岐にわたり様々な業界で活躍している。

売上はアナログ半導体が7割強。残りが半導体を組み込んだプロセッサなど(いわゆるCPUと呼ばれる演算用の半導体)で構成されている。

売上の7割強がアナログ半導体で構成されているということもあり、アナログ半導体業界の売上動向と同社の売上動向はほぼ連動していることから、テキサスインスツルメンツを見る場合はアナログ半導体を見るという認識で問題ない。

次に、そもそもアナログ半導体とは何か?について説明しながら、同社のビジネスモデル等を解説していく。

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【米国株分析】3M(MMM)のビジネスモデル・競争優位・リスク https://market-pass.jp/toshi/usstock/2902/ https://market-pass.jp/toshi/usstock/2902/#respond Fri, 28 Jan 2022 12:11:17 +0000 https://market-pass.jp/?p=2902 3Mの企業概要
会社名3M Co
代表者マイケル・ローマン
設立年1902年7月
本社米国ミネソタ州
業種医療関連

3Mは、主に化学系の素材の開発に強みを持つコングロマリット企業である。

コングロマリット企業とは?

技術的にも市場的にも、相互に関連性のない事業の集合から形成された複合企業のこと。日本では楽天やソニーなどが該当する。

活動領域は幅広く、主に4つの分野に分けて事業を行っている。

出所:3M「Investor Relations」
事業内容シェア
Safety & Industrial工業、電力市場を対象とした産業37%
Transportation & Electronics自動車や電子用製品関連業界を対象27%
Cosumer消費財関係の開発17%
Healthcare医療関連や食品関連をカバー26%

51のコア技術を中心にした高い製品開発力を武器に成長を続けることに加え、積極的な企業買収でカバー分野をどんどんと拡大させていく。

3Mがこれまで大きく成長してきた背景には、その企業文化が大きくかかわっている。多くの企業文化があるが、その中でも特に注目されているのは以下である。

【3Mの企業文化】

  • 15%ルール:業務時間の15%は自分のやりたい仕事をする権利
  • ブートレッキング:上司の命令に背いて、業務時間外に会社の設備を使っての研究開発が出来る
  • 11番目の戒律:部下のやりたい仕事は、上司がプロジェクトが失敗すると証明しないとやめさせられない
  • ジェネシスプログラム:自分の担当外の分野や、部門承認が下りなかったプロジェクトでも、本部承認を得られれば予算がおりる

これらの企業文化が3Mをこれまで大きく成長させてきており、ポストイットなどの世界的発明につながっている。

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【外国株分析】ASMLのビジネスモデル・業界構造・競争優位・リスク https://market-pass.jp/toshi/usstock/2831/ https://market-pass.jp/toshi/usstock/2831/#respond Fri, 28 Jan 2022 08:09:33 +0000 https://market-pass.jp/?p=2831 ASMLの銘柄概要
会社名ASML Holding NV
設立年1994年10月
業種半導体
社員数28,073人

1984年創業のオランダに本社を構える半導体製造装置メーカー

シリコンウェーハという半導体の元となる素材に、特殊な光(紫外線など)を当てて回路を書き込む装置であるリソグラフィ(露光装置)を製造している。

露光装置業界でのシェアは圧倒的であり、現在需要が大きく増加している高品質バージョンの装置でもシェアは他の追随を許さないほど。特にEUV露光装置という最先端の機械シェアは100%で、世界でもASMLしか作れる会社は存在しない。

また、EUV露光装置の次に高性能な回路を書き込めるArF液浸機械についてもシェア95%であり、露光装置全体の金額シェアは8割近くとなっている。

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【米国株分析】Googleのビジネスモデル・競争優位・課題 https://market-pass.jp/toshi/usstock/2624/ https://market-pass.jp/toshi/usstock/2624/#respond Mon, 24 Jan 2022 00:30:26 +0000 https://market-pass.jp/?p=2624 Googleの会社概要
会社名Alphabet Inc
設立年1998年9月
業種IT・通信
社員数98,771人

正確にはGoogleを所有するAlphabet社として上場しているが、元々の社名はGoogle。

1998年にラリーペイジら・セルゲイ・ブリンによってGoogleが設立された。その後2015年に多様化した事業をコングロマリットとして再編することにし、その際にAlphabet社を設立。Googleを新規に設立したAlphabet社傘下に置き、インターネット事業を中心に行うようになった。

ちなみにGoogleの社名の由来は、10の100乗を示すGoogolの綴りを間違ったためだといわれている。

それでは、これからGoogleのビジネスモデル・競争優位・課題を見ていこう。

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https://market-pass.jp/toshi/usstock/2624/feed/ 0 2624
【米国株分析】コストコのビジネスモデル・競争優位・リスク https://market-pass.jp/toshi/usstock/2209/ https://market-pass.jp/toshi/usstock/2209/#respond Sun, 09 Jan 2022 01:18:05 +0000 https://market-pass.jp/?p=2209 コストコの銘柄概要
会社名Costco Wholesale Corporation
設立日1976年2月
創業者ジム・シネガル
業種Retail
従業員数288,000人

コストコは、1976年に創業された大型のホールセールストア(会員制の倉庫型卸売り)。米国では、ウォルマートと並び国内最大の生活用品小売店の1つとなっている。

コストコは店舗が巨大倉庫をそのまま使用していることが特徴であり、業界内でも屈指の安さを誇る販売形式となっている。

安さの秘密は有料会員プランで、年会費(3コースほどあるが)を払わなければコストコで買い物をすることはできない。

しかし、商品の安さが人気を集め、コストコの有料会員数は5000万人、家族cardなども含めた会員数でみると1億人を超えている。

単位は千、出所:Costco Wholesale Corporation

まさに世界を代表する超巨大小売企業なのだ。

コストコのビジネスモデル

年会費による価格競争力

基本的なビジネスモデルは、非常に原価率の高い(つまり安い)品物を大量に仕入れ、その購入権を年会費という形で徴収するというもの。いわゆる【安い品物を買う権利を販売するサブスク】と解釈できる。

コストコの製品は軒並み非常に安い。ほとんどの商品が原価率8割を超えているというレベルである。

もちろん販売業種によって変化するが、小売業界全体としては5割から7割といわれているため、業界平均を大幅に下回る価格で販売しているということがわかる。

原価率が高いとなんで安いの?

原価率が高いほど販売者の利幅は薄いため、基本的に販売価格は安くなる。

もちろん、原価率が高くて販売価格も高いことはよくあるが(高級レストランなど)、コストコのような生活品を販売する小売業の場合、販売価格を抑えた上での競争になるため、販売価格は安く提供される。

そのような販売形態をとっているため、通常の小売り業的売上(〇〇円分の商品を売った)だけではコストコは収益を成り立たせることはできない。コストコの収益は会員費があってこそなのだ。

実際に売上を見てみると、コストコの売上の約98%は小売業の売上(Net sales)、約2%が会員費(Membership fees)となっている。

出所:Costco Wholesale Corporation

しかし、これを利益ベースに直してみると、利益の7割を会員費が占めている。会員費ビジネスであるため、通常の小売店よりも景気の良し悪しが売上に影響しないと考えることができる。

また、利益の大半が年会費という利益率100%近い収益のため、インフレの進行による利益率悪化などに対してもある程度の耐性を持つ

なんで年会費ビジネスだとインフレに強いの?

通常の小売店だと、仕入れ価格が高くなるためインフレ進行は原価の高まりにつながる。

年会費ビジネスであればそもそも仕入れも何もないので、物価状況の影響を受けることはない。

インフレ下では小売店も値上げをしないと利益率を維持できないが、BtoCの値上げは、たとえ米国でも1年近くかかるケースも少なくないため、インフレは利益率悪化につながる。

結論としては、コストコは、非常に安い価格で商品を販売することによって「コスパの非常に良いお店」として知名度を獲得した。その安さを求める人たちから会員費を徴収するという構造になっている。

仕入先への価格交渉力

コストコは商品の仕入れや陳列方法にきちんとした基準を持っている。

具体的には、コストコは取り扱う商品に対してブランドを絞っているということだ。実際にコストコの行ってみるとよくわかるが、ある商品に対して複数ブランドの商品を置いてあるケースは少ない傾向にある。

これはブランド数を限定することで、その仕入先に対して価格交渉力を強く保つことを狙っているからだ。安く仕入れが出来れば、その分安く商品を販売でき、それはコストコのユーザーの満足度の上昇に寄与する。

なんでブランド数を限定すると価格交渉力がつよくなるの?

生産者からしてみれば、コストコほど強い販売力を持つ小売店に扱ってもらえれば、相当な売上が見込める。

しかし逆に言えば、コストコと契約が切れたらその強い販売網と売上を失うことになるので、ある程度融通を利かせないといけない立場になる。

結果としてユーザー解約率が低下(実際9割以上が継続契約している。)し、収益の安定化につながるというわけだ。

巨大倉庫を店舗にしている

また、コストコは店舗が巨大倉庫を利用している点が特徴的だ。

倉庫をそのまま店舗にすることで、バックヤードを作らず、面積を効率的に販売につなげられる利点がある。そのため、利益率を高めることができる。

他にも多くの利益上昇の策はあるが、コストコで重要なのはメンバーシップの会員数と継続率だ。そこを重要視していきたい。

総合販売店の業界情報

小売業界はかなり細分化されているため、ここではコストコが属する総合販売店の業界情報をお伝えしていく。

小売りはそもそも何を売っているか?で大別されるケースが多い業界だが、この総合販売店業界は日常生活で使用する商品や食品を含めたあらゆる商品を販売しているタイプの小売店だ。

この業界の基本的な戦略は安さでお客様を引き付けるというもの。

業界として安さを魅力にしているため、比較的インフレは影響を受けやすい業界だといえよう(ロジックは先述のとおり)

小売店の基本的なビジネスも流れは次のとおり。

【小売店ビジネスの流れ】

  • どんな商品を仕入れるか?どんな品ぞろえにするか?
  • どこからどのように仕入れるか
  • 店舗をどんなスタイルで運営するか(コストコはここで有料会員プランを採用)
  • 広告・宣伝をどうするか?
  • どのように店舗を運営するか(実際のコスト管理など)

この5項目で流れていくケースが多い。企業を比較する際は上記5項目でどの点が違うかを考えてみよう。

昨今のトレンドとして注目されているのがECへの対応だ。コロナもあり、より急速に加速したEC需要は多くの小売店のEC対応を加速させた。実際に、これまではAmazonなどの伸長のおかげで総合販売店の売上はやや悪影響を受けていた。

ウォルマートやコストコといった超大型店から、やや小型の小売店に至るまで多くの小売店でEC対応が本格化している点には留意したい。

コストコの競争優位

【コストコの競争優位】

  • 非常に安価な価格で商品を販売できるシステムを持ち、その情報が非常に広まっているという知名度の高さ故、今後の人口増加・所得増加・消費増加を業績に反映させることが可能。
  • 年会費が利益の大半を占める収益構造のため、業績の安定化を図ることが可能。
  • インフレなど、一般的に小売り業界に対して逆風になるイベントに対してもある程度の耐性を持つ。
  • 現在は米国内での展開が主だが、日本などを含め、諸外国へ進出をしている。そのため、今後の海外展開の成功、進出成功先での所得増加などにより業績拡大の機会を得ることが可能。

コストコのリスク

【コストコのリスク】

  • 倉庫をまるごと使うという店舗形態を採用しているため、出店地域に一部の制限がかかる。ウォルグリーンのような小型薬局小売店のように、全国民の8割の生活圏にリーチするというような生活密着型を前面には押し出せない。
  • ターゲットが比較的上流層であるがゆえに、上記内容とも被るが、出店地域が限定される。大々的な出店攻勢がかけられないため、結果的に業績の急拡大が難しいという側面がある。
  • 小売業界全体の逆風でもあるが、Amazonような大規模ECの進出によって対面販売の割合が下落(ECに客を取られている)している。対応策も講じてはいるがやはりやや遅れ気味のため、ECへの対応策が後手に回っている可能性がある。

コストコの業績グラフ

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【米国株分析】Netflixのビジネスモデル・競争優位・リスク https://market-pass.jp/toshi/usstock/2174/ https://market-pass.jp/toshi/usstock/2174/#respond Fri, 07 Jan 2022 08:55:17 +0000 https://market-pass.jp/?p=2174 Netflixの会社概要
会社名Netflix Inc
設立日1997年8月
創業者リード・ヘイスティングス
業種Services
従業員数7,100人

Netflixは世界最大の有料動画配信サービスを運営する企業。

2022年1月時点でユーザー数は2億1,000万人を超え、2位のディズニープラスを約1億人上回り世界一のユーザー数を誇る。

出所:Netflix「2021 Proxy Statement」

同社は1997年に郵送でレンタル・返却が行えるレンタルビデオ店として創業。これは創業者がレンタルビデオの延滞料金を支払った際の後悔をもとに生まれている。

その後は郵送型レンタルビデオ店というだけではなく、定額制のレンタルビデオサービスを開始。現在のサブスクリプション型の先駆けとなるサービスを提供し始めた。

1か月わずか数ドルで何本でも映画が見れるというコンセプトが大ヒットし、同社の規模はどんどん拡大をしていった。

かなり先進的な取り組みを行う会社で、2007年にはインターネットを利用した動画配信サービスも開始。当初こそダウンロードに時間がかかるなどの問題点が指摘されてきたが、その後の成功は現在のネットフリックスを見ればわかる通り。

その後はカナダを皮切りに海外進出を目指し、2015年にはアジア進出も果たした。

現在では、冒頭でも述べたような2億人を超す世界最大の動画配信サービスへと成長している。

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【米国株分析】VISAのビジネスモデルと業界での優位性 https://market-pass.jp/toshi/usstock/2140/ https://market-pass.jp/toshi/usstock/2140/#respond Fri, 07 Jan 2022 02:30:33 +0000 https://market-pass.jp/?p=2140 VISAの会社概要
会社名Visa Inc
設立日2007年5月
業種Technology
従業員数17,000人

VISAは、世界最大の国際的な決済ネットワークを保有・提供する企業。

クレジットカードのイメージが強いがVisa自体はあくまで決済ネットワークを提供する会社であり、クレジットカードの発行などは行っていない。Visaの決済ネットワークを利用して決済を行うカードをVisaブランドという。

Visaが利用されている地域は世界200か国以上であり、これはMastercardと並んで世界最大規模の決済ネットワークとなっている(取り扱い金額はVisaが1位)。

VISAのビジネスモデル

クレジットカード業界は非常に寡占化が進んでいるので、業界情報とVisaの情報がかなり似通っている節もあるため、ここでは、業界情報とVisaの収益構造を併せて解説していく。

クレジットカード業界のビジネスモデルは大別すると2つ。クレジットカードの決済ネットワークを提供する会社(VisaやMastercard)と、カード発行業務も併せて行う会社(American express)だ。

ネットワークのみ提供

収益はあくまでカードの利用金額や回数に伴う決済ネットワーク使用代金。

収益源はそこのみに限定されるものの、カード利用代金の踏み倒しなどというようなリスクを負わないし、カード発行の手間もかからない。

カード発行とネットワーク提供

カードを発行するという業務を合わせて行う。大きな違いはその1点で、金利収入やカード決済に伴う手数料などを追加で得ることができる。

しかしその分のリスクもあり、クレジットカード利用の踏み倒しなどのリスクや、発行するための手間や費用が掛かってくる。また、カードを発行するために広告宣伝なども行う必要がある。

基本的なビジネスモデルは上記の2つであって、業界ではVisaやMastercardはネットワーク提供のみを行い、American expressはカード発行も併せて行っている企業である。

クレジットカード業界のお金の流れ

クレジットカード業界のお金の流れは以下のとおり。

①:【加盟店▲1万円:ユーザー+1万円】
消費者が1万円の買い物をすると、加盟店(いわゆる小売店や飲食店などユーザーがカードを使う場所)は、お金をその場では受け取らずに商品・サービスを提供する。
②:【加盟店+9500円:管理会社+500円:ユーザー▲1万円】
加盟店から管理会社(クレジットカードの使用金額などを一括管理している会社)に対して『1万円の買い物があった!』と連絡をする。そこで管理会社は1万円から加盟店手数料(500円と仮定)を引いた金額を加盟店に支払い、ユーザーからは1万円を徴収する。
③:【管理会社▲400円:カード発行会社+400円 】
その後加盟店は500円の利益の中から、カードを発行した会社(銀行が多い。三井住友ビザカードなら三井住友銀行のこと)に手数料(400円と仮定)を支払う。
④:【カード発行会社▲250円:Visaなど+250円】
最後にカード発行会社はVisaなどの決済ネットワーク提供会社に決済ネットワーク使用代金を支払う。

どんどん下流(ユーザー側)から上流(Visa)側にお金が流れていくイメージだ。

クレジットカード業界では、カードを発行する銀行などの組織を「イシュアー」、加盟店などを管理する会社を「アクワイアラー」と呼ぶ。

この2つの名前で解説されるケースも多いので注意してみてみよう。

VISAの収益源

おもにVisaの収益源は3種類で、それぞれの売り上げ比率は大まかに以下のとおり。

【VISAの収益源(比率)】

  1. サービス手数料:45%
  2. データ処理手数料:35%
  3. クロスボーダー手数料:20%

コロナによる旅行需要減少でクロスボーダー手数料が大きく落ち込んだ。

出所:VISA

それぞれの内容を見ていく。

サービス手数料

自社カードを使った金額に依存して変化する手数料。

平均的に1000円の使用額に対し1円程度と言われている。

データ処理手数料

自社ネットワークの利用回数に応じて発生する手数料。

1回の取引当たりで1円程度が発生しているケースが多い。

クロスボーダー手数料

カードを使った国と加盟する国が異なる場合に発生する手数料で決済処理と為替処理にかかる費用のこと。

3種類の収益の中でもっとも利益率が高いといわれているため、コロナで海外旅行が出来ない事態は大きな収益下落へとつながった。

VISAの競争優位と課題

VISAの競争優位

まずVISAの競争優位を見ていく。

【VISAの競争優位】

  • 参入障壁が非常に高く、新規参入がほぼ不可能な業界でシェア1位
  • 全世界で通用する知名度とブランド
  • これまで世界規模で決済ネットワークを運営させてきた信頼と実績
  • 今後のECなどの電子決済手段の普及
  • 発展途上国での決済インフラの発展

この中で注目したいのが、③のこれまでの信頼と実績です。やはりお金を直接扱う業界である以上、信頼性は非常に大きなファクターになってきています。

現在、世界中で消費トレンドになっているのが【BNPL】という消費スタイルです。これはBuy Now Pay Laterの頭文字をとったもので、後払い決済のことです。

BNPLが今後進展していくと、現在主要トレンドのクレジットカード決済が廃れていってしまうという懸念もあるのですが、実際にVisaの存在価値が大きく損なわれるか?と考えるとそうとも言えません。

決済における安全性などを加味すると、BNPLなどに決済シェアを奪われることはあるでしょうが、大型取引などは引き続き安心を求めての利用が継続していきそうです。

また、BNPLはそもそもVisaなどのカード会社の審査が厳しいことが流行の背景にあります。そのため、BNPLも一時的なトレンドで終わるのでは?という見方もできるわけです。

なぜなら、BNPLの滞納が大きくなってくるとそのビジネスが成り立たなくなるからですね。

VISAの課題

VISAの課題は次のとおり。

【VISAの課題】

  • 現状の決済ネットワークを使用しない直接決済サービスの普及が課題。たとえば小売店の〇〇Payなどの普及で中抜きをさせない決済サービスが大きく普及するとVisaとしては逆風となる
  • 電子決済の普及やビットコインなどの代替決済手段が技術革新によって広まっている。代替されるリスクに注意。これは上記の〇〇Payと似ているが、全体的なクレジットカード決済離れにつながるので、改めて記載。
  • 消費額・海外旅行需要に収益が連動しやすいので、コロナの長期化は大きなダメージになるというリスクも持つ。コロナ状況下で株価下落要因の1つとされているのがクロスボーダー取引の減少。この取引は手数料率が高いため、収益性が高いのだが、コロナに伴う海外旅行の減少を受け大きく収益性が悪化している。

VISAの業績グラフ

最後に

いかがでしたでしょうか!

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【米国株分析】Appleのビジネスモデルとスマホ業界について https://market-pass.jp/toshi/usstock/1720/ https://market-pass.jp/toshi/usstock/1720/#respond Tue, 28 Dec 2021 00:24:26 +0000 https://market-pass.jp/?p=1720 Appleの会社概要
会社名Apple inc
Apple Japan合同会社(日本法人)
設立年月日1976年4月1日
業種IT・通信
従業員数154,000人

アップルは1976年にスティーブジョブスらによって設立されたデジタル製品開発・製造企業。

2021年12月現在、時価総額は2.8兆ドルで時価総額世界一の企業となっている。

順位会社名時価総額
1位アップル2,892,119,663千ドル
2位マイクロソフト2,512,845,975千ドル
3位アマゾン・ドット・コム1,735,139,653千ドル
4位テスラ1,071,550,597千ドル
5位アルファベット935,054,620千ドル
出所:Yahoo!ファイナンス(2021年12月24日時点)

創業当初は現在の最大の主力商品であるスマートフォン関係ではなく、PCメーカーとして設立された。

世界的にヒットし成功をおさめたが、成長は持続せず、しりすぼみになっていった。

創業者の1人にもかかわらず、一時期アップル社を追い出されていたスティーブジョブズが復帰して以降は、今日までヒットを続ける画期的商品のiPhoneなどを発売し、急激に回復した。

アップルの売上は米国を中心に世界中に分散されており、世界中でiPhoneなどのApple製品の人気は高い。

特に売れているのがiPhoneで、現在こそ売り上げに占める割合は下落してきてはいるものの、それでも売上全体の半分以上はiPhoneの売上によるものである。

Appleのビジネスモデル

スイッチングコスト戦略

iPhoneやMacなどの高価格ではあるが高機能・高デザイン性を保有する製品を販売し、いわゆる『Appleファン』を獲得していく。

そして、iPhoneを中心としたApple製品同士の高い連携性を武器に顧客を囲い込み、スイッチングコストを高くする戦略を実施。

スイッチングコストとは?

継続して利用している製品やサービスから、類似する製品やサービスに乗り換える(switch)際に発生するコストのこと。

乗り換えにかかる費用や手間などが該当する。

本来的にはスマホのスイッチングコストは高くないのだが、Apple社の場合は、iPhone、Mac、Airpods、iPadという風にApple製品をそろえることで、クラウドサービスなどを介し、接続性を大きく高めることができる。

クラウドサービスとは?

従来手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由のサービスとするもの。

クラウドサービスでは、スマホやPCなどの情報端末とWebブラウザ(ネット)を用意することで、どの端末からでも様々なサービスを利用できるようになる。

そのため、iPhoneを購入した顧客にとって、他社のスマホに買い替えることは、単なるスマホの買い替えというよりも、周辺機器の接続性・快適性の悪化という側面も抱え込むことになる。つまり、Apple社は顧客の囲い込みを図っているのだ。

また、最近特に収益性が上がってきた分野としてAppleのサービス部門が存在する。

これはiTunesやiCloudというようなApple製品を使う上でさらに利便性を向上させる取り組みであるが、これは収益性を改善させる役割に加え、それらサービスで現状の快適性を確保しているという面も存在するため、さらなるスイッチングコスト向上の役割を持っている。

製品性能の高さ

囲い込みという点では、単純に製品が魅力的だという点も無視できない。Apple社の製品のほぼすべてはデザイン性が非常に高い。

iPhone発売初期からファンは多いが、Apple社の製品の高いデザイン性・高機能をきっかけに購入し、周辺機器(PC含む)を購入し、クラウドサービスで製品接続性を上げるというサイクルを目指している。

高価格ではあるが高機能・高デザインであるという特徴も押さえておきたいポイントだ。

強固なサプライチャーン

また、Appleは製品の製造に対してかなり強い管理を行う。

Appleは工場を持たないため、あくまで製造は外注ではあるが、部品調達から最後の組み立てに至るまで、すべてに直接的に関与している。

コスト管理や原価設定などをかなり細かく管理しているため、実際に販売する商品が一体いつ、何個、どこの店舗に届くのか?という点に関して非常に正確な知見を有している。

強固なサプライチェーンを保有していることは大きな強みの1つにもなる。

スマホ業界について

同社のビジネスモデルの中心はあくまでiPhoneの発売によるものなので、所属業界としてはスマホを取り上げることにする。

もちろんほかにも様々な業界にまたがっているのは事実だが、ここではスマホを中心とする。

スマホ業界の推移

スマホ業界は2010年ごろから急激に拡大を始めた。もともと広がっていたタイプの携帯電話のシェアを食べる形でどんどんと拡大をしている。

やはりAppleを含む様々な会社のスマホ事業参入と、確信的でかつ利便性の高いスマホの開発が大きな要因となっているだろう。

スマホは価格帯によって細分化可能だ。

ローエンド・ミドルエンド・ハイエンドと3分割が一般的にイメージしやすい分割。その中でもAppleはハイエンドスマホに位置している。業界的に見てもかなり高級志向の商品であるとされている。

その価格の高さもあるのか、業界全体の風潮なのか、要因は完全には定かではないが、スマートフォン市場は近年になって成長速度を鈍化させている。

スマホ全体の所有率は2021年時点ではおそらく世界の6割に達する人口が保有していると推測される(日本の総務省の平成27年度推計による)。

もちろん国によって保有率は大きく異なる。現にマカオや香港などでは人口が少ない先進国という状況にためか、保有率は300%近い数字になっている(Global note調査より)。

一方、当然ではあるが発展途上国では普及率はまだそこまで高くないと推測される。

つまり、スマートフォンの現状は世界全体でかなり普及しており、金額ではない台数べースでもかなり多くの割合(6割以上)が保有しているという状況だと考えることができる。

スマホ業界は鈍化している

さて、話を戻して最近のスマホ成長の鈍化である。

そんな状況(先進国におけるスマホ普及率の高まり)の中、足元ではスマホの出荷台数はかなり落ちてきている。成長鈍化ではなく出荷台数が下落している。

要因としてはスマホ自体が普及したため、スマホ購入の中心層が買い替え需要になったことがあげられる。

しかし、スマホ自体の価格が高い点や、新機種の明確な旧機種との差別化ができていない点が意識され、買い替え需要が高まっていないということが言えるだろう。

そんなスマホ業界だが、近年は5Gという明確な新技術要素が誕生した。今後5G活用の機会が増えれば増えるほどに、スマホ業界自体の量的拡大可能性も高まっていくと思われる。

スマホ業界の見通し

スマホ業界の見通しの後は、現状を見ていこう。

スマホ業界は現状5社で市場シェアの7割近くを占めている。Canalysの調査によると、現状のスマホシェアは

  1. サムスン:21%
  2. Apple:15%
  3. シャオミ:14%
  4. OPPO:11%
  5. Vivo:10%

となっている。

このデータを見るとやはり目を引くのはアジア勢の強さだ(Appleは日本ならシェア7割近い)。

これは、アジアメーカーはAppleのようにハイエンドスマホに集中させるのではなく、ローエンド・ミドルエンドもまんべんなくカバーしているため、アジア地域の途上国にも受け入れられやすいからだとされている。

スマホのような1人1つを前提としているようなデバイス業界では、シェアの高さは今後のアプリや関連製品、その他公共サービス接続などの際のデファクト・スタンダードとなる可能性につながる

デファクト・スタンダードとは?

市場における企業間の競争によって、業界の標準として認められるようになった規格・サービスのこと。

検索エンジンにおけるGoogle、ビジネスツールとしてのMicrosoft Officeなどが挙げられます。

そのような状況では今後継続的な安定収益確保につながるため、会社ごとのシェアやOSごとのシェアは注意してみておく必要があるだろう。

また、先日のAppleの方針転換(ユーザートラック型広告の規制)に代表されるように、ハードウェアやソフトウェアに対して強い交渉力を保有する。

ある一定以上のシェアをハードウェアで握ることはかなり難しいことではあるが、その分のリターンはあるため、その点も押さえておきたい。

また、スマホは業界として非常に大きくなっている業界のため、波及効果についても押さえておきたい。

スマホ製造と切っても切り離せないのは半導体の存在だ。スマホにはさまざまな種類の半導体が使用されている。

スマホ出荷台数と半導体の需要は大きくリンクしているため、この点についても押さえておく必要がある。

Appleの競争優位と課題

Appleの競争優位

まずApple固有の競争優位は以下のとおりである。

【Appleの競争優位】

  • 高いデザイン性と機能性の商品開発力
  • これまでの画期的製品によって、ロイヤリティの高いファン(顧客)が多く存在する
  • 製品同士の連携を強くすることにより、スイッチングコストを高め、高付加価値のサービス・製品を継続的に購入させることが可能。
  • 世界一の時価総額に裏打ちされた豊富な資金力と、強固な財務基盤
  • 製造における強い交渉力を持った管理監督能力

スマホ業界での優位性

【スマホ業界での優位性】

  • スマホ業界が今後も大きく伸びる業界
  • スマホ業界拡大に伴う、ソフトウェアサービスや、接続性を高めるサービスを提供する機会の増加
  • 世界的な人口増加・所得増加に伴うハイエンドスマホのターゲット層の拡大
  • 米中対立に伴うライバルの排斥を米国がバックアップ(ファーウェイ)

これらの点があげられるだろう。

特に注意してみておきたいのは、この中でも強固な財務基盤・資金力だ。

Appleの保有する資産は莫大ゆえ、新規事業や研究開発に大きな資金を投入できる。

iPhoneをひたすら売り続けるモデルから、それらを起点にした周辺を囲い込み作戦や、Appleカー・Appleグラス、自社半導体生産など、より高収益・広範囲・高成長ビジネスへと打って出られるのは、その資金力によるところが大きい。

今後大きな成長が予測されている業界へ、豊富な資金をもって参入できるというのは非常に大きな利点となる。GAFAMに共通する内容ではあるが、この資金力というのは大きな武器になるという点を抑えておこう。

Appleの課題

次に、Appleの課題についてみていこう。

【Appleの課題】

  • 売り上げの6割をiPhoneに依存する製品・業種ポートフォリオに不安定さ
  • Jobs亡き後、ロイヤリティの高いファンをつなぎとめられるだけの画期的新製品の欠如
  • アジア地域でのスマホ需要拡大チャンスの獲得失敗リスク
  • ローエンドスマホの参入による、付加価値の獲得難易度の上昇
  • 参入障壁の低い業種故の競争激化・シェア低下懸念

この中で特に注目したいのは、やはり参入障壁の低さ故の弱点だ。

参入障壁が低い業界というのは、あらゆる会社の参入を招いてしまう。特にその中でもピンポイント特化して参入してくる企業の存在がAppleのような大企業にとっては大きなリスクになりうる。

例えば、Appleは現状ハイエンドスマホに特化した販売形態を採用している。iPhoneは常にその時代の最先端の技術と最上位レベルの価格を兼ね備えている(最近だとGalaxyが超高級路線を進めているが)

その一方で、スマホ製造自体はそこまで高度な(参入が不可能なほどの)技術が必要なわけではないため、参入する企業も多い。成長業界ほど、参入した場合のリターンが高いため多くの企業を招くというのは古今東西変わらない。

実際にAppleはハイエンドスマホの覇者といってもいいが、ローエンド・ミドルエンドに関しては何らリーチの手段を持たない。

しかし、一方でローエンド・ミドルエンドスマホの需要は当然ハイエンドスマホよりも多い。しかもそれら顧客は別にハイエンドスマホを買うようなことはしない。

つまりハイエンド・ローエンド・ミドルエンドで棲み分けができている(サムスンなどは全部やるが)といっても、ミドル・ローエンドスマホの需要の高まりはそのままハイエンドスマホの需要減少へ直結することになる。

参入障壁の低さゆえに、今後需要が大きく高まるロー・ミドルエンドスマホに多くの企業が参入し、そのままハイエンドスマホのシェアを食い散らかすことはリスクといえるだろう。

Appleの業績グラフ

最後に

今回はAppleについて確認したが、今後も米国企業にスポットを当てた記事を随時更新していく。

S&P500を網羅するつもりなので、GAFAMからはじめ、少しニッチな企業の分析記事も発信していくので、お楽しみに。

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