証券アナリスト(CMA)財務分析科目の要点をまとめております。
第26回は、税効果会計の意味と計算について解説していきます。
証券アナリスト資格についてや、各科目の勉強方法、おすすめの教材については下記の記事をご参考ください。
〈第25回「連結の考え方と資本連結」はこちら〉
税効果会計の意味と必要性
税効果会計の意味
税効果会計とは、企業会計上の資産・負債の額と課税所得上の資産・負債の額に相違等がある場合において、法人税等の額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手続きです。
税効果会計の必要性
企業会計と課税所得計算はそれぞれの目的が違うため、収益または費用の認識時点や資産または負債の額が一致しません。
損益計算書に計上される法人税等の額は、法人税法等に従って計算された課税所得を基礎とした法人税等の額(実際に納付する額)です。
そのため、法人税等を控除する前の企業会計上の利益と、課税所得とに差異があるときは、法人税等の額が法人税等を控除する前の当期純利益と期間的に対応しないことになります。
そこで、損益計算書上で法人税等の額と法人税等を控除する前の当期純利益を対応させるため税効果会計が必要とされるのです。
税効果会計と一時差異
一時差異とは
会計上と税務上の差異は一時差異と永久差異の2種類ありますが、試験上重要なのは一時差異です。税効果会計の対象となるからです。
一時差異とは、貸借対照表及び連結貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と、課税所得計算上の資産及び負債との差額です。
一時差異が生じる場合
一時差異が生じる場合はいくつかありますが、代表的なものは次の通りです。
【個別財務諸表で発生する場合】
- 収益または費用の帰属年度が相違する場合
- 資産の評価替えにより生じた評価差額が直接純資産の部に計上され、かつ、課税所得の計算に含まれない場合
【連結財務諸表で発生する場合】
- 資本連結に際し、子会社の資産及び負債の時価評価により評価差額が生じた場合
- 連結会社相互間の取引から生じる未実現損益を消去した場合
- 連結会社相互間の債権と債務の相殺消去により貸倒引当金を減額修正した場合
なお、一時差異の種類には、将来減算一時差異と将来加算一時差異があります。試験でよく出るのでここも確認しておきましょう。
将来減算一時差異
将来減算一時差異とは、当該一時差異が将来解消するときに、その期の課税所得を減額する効果を持つ差異です。
【将来減算一時差異の例】
- 減価償却費限度超過額
- 各種引当金繰入限度額
- 棚卸資産の評価損否認額
- 有価証券の評価損否認額
将来加算一時差異
将来加算一時差異とは、当該一時差異が将来解消するときに、その期の課税所得を増額する効果を持つ差異です。
【将来加算一時差異の例】
- 剰余金の処分方式による圧縮積立金の積立額
- 連結会社相互間の債権と債務の相殺消去に伴う貸倒引当金の減額修正
税効果会計と永久差異
永久差異とは、企業会計上の税引前当期純利益の計算において、費用または収益として計上されるが、課税所得の計算上永久に損金または益金に算入されない差異のことです。
将来の課税所得の計算上加算または減算させる効果を持たず、将来解消されない差異です。税効果会計の対象ともなりません。
あまり試験にも出ないですが、概念だけでも覚えておくと良いでしょう。
【永久差異の例】
- 受取配当金の益金不算入額
- 交際費の損金不算入額
- 寄付金の限度超過額
税効果会計の計算
税効果会計は次のように計算します。
【税効果会計の計算手順】
- 一時差異の把握:将来減算一時差異、将来加算一時差異の金額を把握
- 法定実行税率の算定:税効果会計で調整される税金を計算する
法定実行税率=法人税率×(1+住民税率)+事業税率/1+事業税率
税効果額の算定
繰延税金資産=将来減算一時差異の金額×法定実行税率
繰延税金負債=将来加算一時差異の金額×法定実行税率
ここで、第26回「税効果会計の意味と計算」は終わりです。
最後に
証券アナリストなど、各種資格を効率的に取得されたい方は、資格スクールを受講するのも有意義です。
ただし、独学より費用は高くなってしまうので、資料請求して、しっかり吟味してから受講することをおすすめします。
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