公務員が担っている「統計調査」
こちらの記事にも書かせていただいた通り、筆者はかつて地方公務員でした。
公務員の仕事が多岐にわたることも併せて書かせていただいております。
公務員が担う仕事の一つが「統計調査」です。実は統計の数は非常に多岐にわたります。
国が実施主体となる統計の中でも、国勢統計、国民経済計算その他国の行政機関が作成する統計のうち総務大臣が指定する特に重要な統計を「基幹統計」として位置付けており、その数は現在53種類あります。下記に掲載されていますが、一般の方ですと聞いたことが無い統計調査も多いかもしれません。
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/1-3k.htm
多くの場合これらの統計調査は、国が実施主体となり、都道府県にその事務が降りてきます。調査によって都道府県が実施するものと、さらに市町村に実施事務をおろすものがあります。
筆者は地方公務員時代、何年かこの事務に従事しました。なぜかと言えば元証券アナリストだったので、役所の人に「おせちーずは統計に詳しい」と思われたのです。
が、証券アナリストは統計結果を使う立場であり、統計を取得する立場ではありません。もちろんその両者は全く違うものです。正直公務員が担う統計調査の仕事には相当面喰いました。
「家計調査」とは
前置きが長くなりました。とりあえずこの記事では、投資家に比較的身近だと思われる「家計調査」について書かせていただきます。
「家計調査」と言われてもピンとこない人でも、消費者物価指数(CPI)のベースになる統計と言われれば、なるほどと思われる方もいらっしゃることでしょう。近年は、個人消費の指標としてニュース等で報道されることも増えてきたように思います。
「家計調査」は総務省の管轄です。総務省の定義によれば「国民生活における家計収支の実態を把握し,国の経済政策・社会政策の立案のための基礎資料を提供することを目的とする」調査です。
対象は、全国の世帯ですが、下記に該当する場合は調査の対象外とされます。
例えば飲食店を営む世帯は、家計消費と自営業との区別をつけにくいからという理由です。
- 学生の単身世帯
- 病院・療養所の入院者,矯正施設の入所者等の世帯
- 料理飲食店,旅館又は下宿屋(寄宿舎を含む。)を営む併用住宅の世帯
- 賄い付きの同居人がいる世帯
- 住み込みの営業上の使用人が4人以上いる世帯
- 世帯主が長期間(3か月以上)不在の世帯
- 外国人世帯
さて、これらをどうやって除外して、調査世帯を決めるかわかりますか?
調査世帯の選定
国勢調査は、日本の全世帯を対象とする調査で「全数調査」と言います。
「全数調査」を英語で”census”と言いますので、国勢調査は”Population census”、つまり人口の全数調査です。
全数調査に対する言葉は「標本調査」です。本来ならば統計は全数調査の方が望ましいのですが、実施するための労力と費用が必要です。
ですから、一部の世帯だけを統計的に偏りがないように選んで調査をします。これを「標本調査」といい、選ばれた調査対象を「標本」(サンプル)といいます。
身近な例で言えば、テレビ番組の視聴率はある民間企業による「標本調査」です。
家計調査も標本調査で実施されます。層化3段抽出法と呼ばれる方法を用い、第1段―市町村、第2段―単位区、第3段―世帯により世帯を選定します。単位区という言葉は耳慣れないかもしれません。
これは調査の範囲を地理的に区切ったもので、おおよそ50~100世帯で1単位区になるよう、範囲を決めているものです。
家計調査の対象世帯選定にあたっては特定の世帯が続けて調査の対象にならないよう配慮されています。
第1段の市町村には、県庁所在地と政令指定都市がすべて含まれるほか、全国をうまく網羅するよう、2022年2月現在、以下のように分類されて選択されています。
県庁所在地と政令指定都市以外については、総務省が実施市町村と対象単位区を決めます。
令和3年4月現在の実施市町村は、以下に掲載されています。
https://www.stat.go.jp/data/kakei/pdf/ichiran.pdf
全国約9,000世帯を対象としていますが、県庁所在地及び政令指定都市の世帯が占める割合が高いことを知っておくとよいでしょう。
長くなりました。
少しずつ書いていきますので、次回をお楽しみに。
コメント