ネガティブな要素の方が注目されやすい?
筆者個人的には9月に菅前首相が退陣を表明して以降、衆院選が終わるまでは方向感がない展開が続くだろうと想定していました。
一つのイベントである政権選択選挙が終わり、さしあたりマーケットは岸田首相にご祝儀を差し上げたというところでしょうか。選挙の結果はポジティブだったということでしょう。
ポジティブな要素とネガティブな要素のどちらが注目されやすいかといえば、こと近年の日本株投資に関しては、残念ながら後者であるように思います。
ポジティブな要素の賞味期間は短いように感じますが、ネガティブな要素の時間軸的存在感が長く感じるのは筆者だけでしょうか?
2008年春に似てきたように感じる足元
そんな筆者は「2008年春に似てきたような気がする」と感じています。
2008年の金融マーケットでの最大の話題は9月に起きたリーマンブラザーズの破綻だったでしょう。
その半年ぐらい前の状況に、現在が似てきているように思うのです。13年半前を振り返りながら、理由を2つ挙げます。
1.原油高
昨年春は歴史的な原油安でしたが、今は原油安などあったかしら?と思うようなレベルで価格が上昇していることに気づいている方が少なくないでしょう。
日常的にガソリンエンジン車を走らせていれば、ガソリン価格がその原油高を知らせてくれますし、筆者が暮らす北国では寒い時期の必需品である灯油価格も原油高を知らせてくれます。
実際WTIは2021年初比で約6割上昇しています。
13年前がどうだったのかを振り返ってみましょう。
グラフは2006年~2008年の月次のWTIのグラフです。
2007年初頭ぐらいからじわじわ上昇し、2008年初頭から速度を上げて上昇し続け、2008年夏には年初から約45%上昇しています。
夏以降大きく下落したのはサブプライムローン問題が日に日に深刻度を増して来たことに伴い、原油からも資金が逃げたのでしょう。
2021年初頭からのWTIの上昇は13年前よりも顕著です。ちょっと不気味に思えませんか?
2.原材料価格の価格転嫁の波
農林水産省が発行したには、以下のような記載があります。
「原油価格の急騰は、ガソリンをはじめとする石油関連製品の値上げとともに、海上輸送運賃や包装資材価格の値上げによる食料品価格の値上げといった形で国民生活に様々な影響を及ぼしている。また、生産資材価格の上昇を招き農業経営に影響を与えた。」
「平成20年度 食料・農業・農村白書」
2008年は穀物・大豆の価格が上昇しました。
そして、原料価格の製品価格への転嫁が株式投資のテーマになり、値上げというニュースが好感されるマーケットだったのです。
2021年に入ってから日本においては食用油、小麦等をはじめとして食品等の値上げが相次いでいます。
食物需給は必ずしも原油価格にのみ影響されるわけではなく、作況も関連しますが、2021年の場合はコロナ禍におけるサプライチェーン網の維持の難しさと、物流がスムーズではないという要因も価格の押上に寄与しているでしょう。
例えば以下のグラフは、シカゴ商品取引所の小麦先物価格の推移ですが、じわじわ上昇していることがわかります。
繰り返しになりますが、リーマンブラザーズの破綻は2008年9月でした。
原油高や食物価格の上昇が顕著になってから数か月後のことでした。 リーマンショックも前年から兆候はあり、サブプライムローン問題は2008年初頭ぐらいには既に意識している人が少なくありませんでした。
ストラテジー上、考慮しておくべきこと
現在は金融機関等にそれなりの規制がかかっている故、金融機関が2008年当時と同様のリスクアセットを持つことはレアではありますが、中国での不動産関連融資の行方がやや不透明になりつつあることはよく知られていることでしょう。
起きていることこそ場所も内容も違いますが、なんとなく気味が悪いという状況という意味では現在は2008年春ぐらいに似ていると感じます。
今から先数ヶ月が2008年夏以降と同様にならないことを祈りたいものですが、金融ショックは突然起きることを2020年初頭のコロナショックで認識されたことと思います。
ご祝儀相場に踊らされず、万が一に備えてリスクテイクは適宜にしたうえで、流動性を重視することを心がけたい日本株投資環境だと考えています。
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