MSCI標準指数とその定期見直しとは
MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)社は、国別、地域別、産業分類別の指数や、先進主要国やエマージングなどマーケットタイプ別の指数など、多岐にわたってカテゴリー分け、ジャンル分けした多数のインデックスを提供しています。
指数は浮動株ベースの時価総額加重平均で算出されます。日本株でいえばTOPIXが似たようなルールで算出されます。
また、MSCIはマーケットを問わないので、日本株であれば東証1部以外の銘柄も採用されることがあります。
REITにも採用されているものがあります。
MSCIの株式インデックスは年に2回、5月と11月に指数構成銘柄の定期見直しを行います。投資家が注目しているのは「標準指数」と呼ばれるものです。
この指数は50ヶ国の株式市場の時価総額の85%をカバーしており、世界の多くの投資家がベンチマークとして利用しています。
指数連動資金も多いので、銘柄入れ替え時には除外採用銘柄の出来高が大きく増えます。新たに採用されれば買い需要を産みますし、除外が決定すると売り需要を発生させます。
日本時間で2021年11月12日朝に発表されたMSCI定期見直しで、日本株は2銘柄の新規採用と15銘柄の除外が発表されました。入れ替えは11月30日に実施されます。この日は売買代金が増えることでしょう。
近年このMSCI標準指数の定期見直しでは日本株の除外銘柄数が採用銘柄数を大きく上回っています。前回2021年5月の定期見直しでは採用はゼロ、除外が29銘柄で、入れ替えが実施された5月27日の東証1部の売買代金は6兆円に迫る大商いでした。
2021年11月の定期見直し
改めて、日本時間で2021年11月12日朝に発表された定期見直しを日本株について考察してみます。
下の表が採用除外銘柄で、色を付けた最後の2行が採用銘柄です。
参考のため、直近の時価総額と前回の入れ替えがあった5月末と10月末の株価を載せました。
まずは5月末から10月末までのマーケット環境を確認します。TOPIXは+4.07%でした。
それに対して、除外の15銘柄はもれなく株価を下げています。つまり、この間に総じてパフォーマンスが悪かった銘柄が除外銘柄になりました。この間40%以上下落した銘柄もありますね。
時価総額で言えば、直近で3000億円~5000億円程度が除外の対象になっています。
実はこの除外銘柄の時価総額レンジは前回とほぼ同様です。
アコムは時価総額がやや大きいですが、筆頭株主である三菱UFJFGが1/3超を保有していることで、浮動株比率が相対的に小さいため、浮動株ベースの時価総額が他の除外銘柄とはそれほど違わないのだと想像します。
一方、同じ期間に米国のS&P500は+8.19%でした。つまり米国株は日本株をはるかに上回るパフォーマンスで推移しています。
前述したようにMSCI標準指数は採用している50ヶ国の時価総額の85%をカバーするインデックスです。
日本株より米国株が好調であれば、定期見直しの結果、米国株のウエイトが高くなります。つまり、相対的にパフォーマンスが弱い国の銘柄が押し出される格好になります。
シンプルな比較ですがS&P500の方がTOPIXより高パフォーマンスであったわけですから、除外銘柄が多いのは合理的でしょう。
国別の採用銘柄数については、後日改めて検証予定です。
一方、採用された2銘柄は、同期間に株価が大きく上昇しています。
どちらの銘柄も大株主がおり、浮動株ベースは決して多くないと思われますが、株価の上昇がそのハンデを補った格好です。
MSCIをはじめとした指数採用銘柄の見直しによる需給は、業績が関係ないため、指数からの除外が発表されると端的に需給が悪化します。
その特徴を鑑みると、「保有していない方が心穏やかにいられる銘柄」があります。それについては改めて別記事にさせていただこうと思います。
[…] 日本株にはネガティブイベント〜MSCI標準指数定期見直し〜 […]