政策保有株とは
政策保有株とは、取引関係の強化や買収防衛を目的に保有する株式のことです。
相互に株式を保有する「持ち合い株」の形式をとることが多いので「持ち合い株」と呼ぶ人もいます。
参照:日本経済新聞「政策保有株式とは 取引関係の強化・買収防衛が目的」
例えば、保険会社が保険契約を得るために、顧客企業株を持つような状態を「持ち合い」と言います。
ただ、資金を効率よく使っているかという点で考えると必ずしもそうではないこともあると考えられますし、東証の市場再編で一つのテーマになった流通株式比率を下げる要素でもあり、近年は削減傾向にあります。
全廃するという銀行も現れた
北国(「ほっこく」と読みます)フィナンシャルホールディングス(以下:HFHD)は政策保有株式を原則全廃すると発表しました。
まずは2026年3月期までの3年間で半減させるそうです。
参照:日本経済新聞「北国FHD、政策保有株を原則全廃へ 3年間で半減」
実は地銀は、地元上場企業のメインバンクかつ大株主であることが多いです。そんな地銀が政策保有株式の廃止を掲げるのは珍しいです。
投資家が意識すべきこと
「政策保有株式」を全廃とか縮小というニュースで意識すべきは、それを発表した事業法人や金融法人が保有している上場株式です。
何故なら、それなりに時間をかけるとはいえ、確実に「売却の対象」になるからです。
「有価証券報告書」に掲載されているものがある
「政策保有株式」に対し、リターンを追求して保有する場合は「純投資」と言いますが、「政策保有株式」はコーポレートガバナンスの観点でその保有理由を明らかにすべきと考えられており、一定の割合以上の保有分については、有価証券報告書に掲載しなければいけないルールがあります。
2019年1月31日に「企業内容等の開示に関する内閣府令」が改正され、銀行のみならず上場企業は有価証券報告書における政策保有株式の開示の拡充を求められました。
この改正により、特に政策保有株式の保有方針等の検討方法や株式数の変動と理由、保有による定量的効果等の記載が必要になりました。また、個別銘柄についての情報開示しなければいけない範囲が貸借対照表計上額の上位30銘柄から60銘柄に広げられています。
HFHDは2021年10月に持ち株会社制に移行した企業で、3月決算ですので、まだ有価証券報告書を発行していませんが、前身は「北國銀行」ですので、北國銀行の2021年3月期有価証券報告書を確認しましょう。これも日経サイトで確認できます。目的の情報は53ページ以降に掲載されています。
この開示を自分の保有銘柄、あるいは買いを検討している銘柄と照らし合わせてください。
自分の保有銘柄が掲載されていれば、売られる可能性を考慮すべきです。
買いを検討している銘柄であれば、HFHDが売ってからの方がいいかもしれないといった検討をすべきでしょう。
残念ながら銘柄コードがありません。なぜなら、ここには非上場企業が掲載されることもあるからです。
自分で調べてみるというのも学びになると思います。
同様のことは経営統合でも
金融機関同士が経営統合する場合も、筆者はこの作業をよくやります。
銀行の株式保有には「5%ルール」と呼ばれる重要なものがあります。銀行が、国内の一般事業会社の総株主の議決権の原則5%までしか株式を保有できないというルールで、金融機関による事業会社の支配を予防することがこのルールの目的です。
ただし、業績不振の会社の経営再建等一部の事由に該当する場合は5%超の保有が認められています。同じ地域を地盤にしている金融機関同士が経営統合する場合、投資先が被ることが少なくありません。
5%以上保有することになる上場企業株式などについては売却の対象になるかもしれないことを考慮に入れるためです。
筆者は今後地銀の再編が進むと考えています。その際、この記事のことを覚えておくと、ロスを小さくできるかもしれません。
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