ある国会議員が、高校数学のカリキュラムについて言及したことが少し話題になったようです。
50代前半の筆者は高校時代文系でしたが、三角関数もベクトルも行列も微分積分も確率も基礎的なことは数学の授業で学びました。
これらを知らないと、「共通一次試験」(センター試験・共通テストの前身)の数学では得点がかなり低くなるような仕組みでした。
何に役立つのかなぁと思ったものがないわけではないですが、そこそこ数学を学んだことは少なからず就職後に役に立っています。
特に証券アナリストになってからは、数学の知識は大いに活きたどころか足りないと思ったくらいで、改めて勉強しなおしたものもありました。
そんな筆者がアナリスト時代に少し驚いたことがありました。当時の自分のボスは、自分より少し若い方で理系学部出身でした。
そのボスに、ある日尋ねられました。
おせちーずさん、高校時代に行列やりました?
やりましたよ。大学入試で2行2列ぐらいは文系でも出題される分野でした。
と答えた記憶があります。彼は、こういいました。
そうだよね。うちの奥さんも文系だったけど行列あったっていうのよ。だけど今は、理系でもやらないんだって。
当時のオフィスの我々のすぐそばには、理系の院卒新人がいたので、彼に尋ねてみると、
「行列やってないです。」
との答え。
え?それってやばくない?
と筆者が思った理由は、行列がどんな分野に使われているかを知らないと理解できないと思うので、その使い道をご紹介するのがこの記事の目的です。
「行列」とは
行列とは、すごくシンプルに言えば数を並べたものです。数を縦と横に並べてカッコで閉じたものです。
の方向を「行」(row)、縦の方向を「列」(column)といいます。
この呼び方は表計算ソフトと同じですので、それほど違和感はないでしょう。
要は「行」と「列」から構成されるから「行列」なのです。
この例でいえば「2行、3列の行列」と言います。
何行何列でも行列ですので、3行1列であれば、以下のとおりです。
ちなみに、MS-WordやExcelはこれらを描画する機能があります。数式エディタみたいなもので、行列に限らず、分数やルートなどもきれいに表現できます。
この数字の羅列が、実は身近なところで使われていることをご存知でしょうか?
「行列」の使い道
その1:ポートフォリオのリターンやリスクを測定する
本気で説明するとものすごく下の図のような数式(これでも相当シンプルなものを選んでいる)ばかりになって、筆者も読むのが嫌になるので、細かい説明は省いて結論だけ申し上げます。
ちなみに、下の式はポートフォリオのリターンを計算するものです。
行列の使い道の一つ目はポートフォリオのリターンやリスクの測定です。
正直、3銘柄ぐらいまでなら手で計算できないこともありませんが、例えば投資信託であれば数十銘柄で構成することが一般的でしょう。
そのような商品を想定し、そのポートフォリオのリスクを計算するときに行列を使うと圧倒的に速く計算できます。
プロはポートフォリオのリスクを測定するソフトウェアを使うこともありますが、そのソフトウェアも行列の計算を使って作られます。
また、筆者はそのようなプログラムを書いて計算させたこともあります。
そこではたいてい行列を計算する関数のようなものが存在しているので、計算したい人は組み入れたい証券のリターンやリスクの数字を入れ、行列を作って演算させる式を書くわけです。
この記事でご紹介した一つ目は、実際に行列を使って計算することは無くても、目的に関しては比較的なじみがあるものだと思います。
次回ご紹介する二つ目の用途は、聞けばなるほどと思うかもしれませんが、そのものずばりはなじみがないものかもしれません。お楽しみに。
コメント