いよいよ皆様の待ちにまった3月FOMCが開催されます。
COVID-19より政策を大きく転換してきたFRBですが、先週の記事にて政策を正常化させる原則と意義についてお話しました。
今回の記事はMacro Trading Factoryによって、2020年1月の金融政策をもとに投資手法を立てるべく書かれた下記の記事を翻訳致しました。
The Fed Is Your Best Friend And The Proof Is In The Balance Sheet Pudding
如何に金融政策と株価に相関関係があるか、今ポジションを取らないとやっていられない病気にかかっている方には、治療薬として是非読んでみていただきたいと思い用意いたしました。
では早速記事に参りましょう。
The Fed Is Your Best Friend And The Proof Is In The Balance Sheet Pudding
-Fedはあなたの大親友であり、その証拠はバランスシートの中に

概要
【この記事の概要】
- FRBの金融政策に基づいて投資戦略を立てることは狂気/無責任であると考えている人もいます。直近の11年間を詳しく調べてみるだけでも反論せざるを得ません。
- もちろん、実際よりも事象を単純化しているとは言えます。ただし、ほとんどの場合、特に金融政策に関しては、物事を複雑にしすぎるよりも単純化しすぎた方が分かり易いでしょう。
- 連邦準備制度と他国の中央銀行のバランスシートと、株式のバリュエーションとの相関関係については、特にここ数ヶ月間のパフォーマンスから否定の余地はないでしょう。FRBの政策に逆らう必要は皆無なのです。
- この記事は3部構成のうちの2番目で、金融政策が強気のスタンスをリードしている一方で、来るべきネガティブな経済状況に気づいていないわけではないことを示すことを目的としています。
- そうは言っても、今まで金融政策は、株式の方向性、ひいては私たちの一般的なスタンスを決定する唯一の最も重要な要素であり、そして確実に最も重要な推進力であったと同時に今も、将来もそうであり続けるわけです。
はじめに
経済データの弱さと最近の地政学的緊張の両方のために、2020年の初めの株式市場(SPY、DIA、QQQ、IWM)について超楽観的にはなりきれない状況です。
しかしゴールドマンサックス(GS)は、米国経済は実質的に不況に強いと述べました。
ISM製造業景況指数が2009年4月の最低値に近づくにつれ、流動性が調整されてきたマクロの物語に言いがかりをつけることがいかに難しいかは明らかです。

私たちが書いた最近の記事では、Fedの金融政策のみに基づいて私たちが強気な姿勢を示していると信じる人が大半でした。
今週の一連の記事ではこれが2番目の記事であり、この側面/疑問について詳しく説明したいと思います。Fedの政策に頼ることは狂気で無責任で、ただのギャンブルなのか。もしくはそれが最も賢明な選択なのでしょうか。
おそらく、「狂気で無責任な」方法とは、実際には中央銀行の方向性に従いそれに応じて投資戦略をとる人々のことではなく、盲目的にFedの政策を無視する人々のことを指すと思いませんか?
シリーズのパートIでは、マクロ経済データが依然として弱く、実際には弱まっているにもかかわらず、少なくとも直接関係のある金融政策を抜きにしてポジティブなスポットライトを懸命に探しても、現状強気になれる理由がほとんどないことを示しました。
この記事のパートIIでは、ルートをさかのぼって、FRBの金融政策に従うことほど重要なことは何もないことを示したいと思います。これは過去11年間の勝利戦略であったことが証明されており、2020年にもこれが変わることはまずないと思われます。
過去の11年:すべての相関関係の母
過去11年間を見る方法はたくさんありますが、3つの主要中央銀行(FRB、ECB、BoJ)の合計額とS&P500インデックスの対比が好ましいでしょう。
チャートが読めなくても、統計家でなくても2つの相関関係が非常に強いことが一目でわかるでしょう。

この記事では米国の中央銀行に焦点を当てているので、このFedと株式の関係を別の角度から見てみましょう。
経済データが、Fedのバランスシートよりも市場の動きを説明するためのより良い統計ツールとして機能していることを実際に指摘している研究があることを、私たちは十分に認識しています。
この結論で私たちが抱えている主な問題は、裏付けとなる研究は通常、重要な/関連する時間の一部しか考慮に入れていないということです。
例として、以下のグラフは過去6年間のデータを使用しています。 短期的に見るにしろ(現在の最も関連性の高い相関関係を判断するため)、長期に焦点を当てるにしろ、測定期間は少なくとも2009年(※リーマンショック後の金融緩和)から開始する必要があると思っています。

主にFRBの政策を頼りにして、ここ数ヶ月でブル寄りに移行してきたので、この私たちの姿勢のシフトが起こってからの関連期間を見ていきます。
私たちが見ているのは確実に非常に短い期間だけではありますが、
- 私たちのスタンスとこの記事において、このデータはより正確です。
- 先述したように、現在のテーマ/相関関係を把握するために、2009年からの十分な期間を使用します。
そして、過去3か月という短い期間を見ると、Fedのバランスシートが経済データよりもはるかに重要で関連性があることは明白なのです。
ドイツ銀行(DB)が分析した以下のFedのバランスシートとS&P500の週ごとの変動の関連性に関するチャートによると、相関を表すR2は0.52であり、先述のグラフの0.17の3倍以上です。

そして、このデータが非常に単純で、非常に鮮明に示されることを下記のグラフで確認してみてください。

FedのバランスシートとS&P500に高い相関関係が無いだとか、議論するようなそんな余地はないでしょう?
Fedおよびその他中央銀行のバランスシート
さて、FRBの政策が唯一最も重要な推進力であるとする考えにおいて、中央銀行のバランスシートを時系列で詳しく見て、それがどこに向かっているのか、結果として株式がどこに向かっているのかを理解することとしましょう。
パウエル議長がレポ市場を落ち着かせるための「一時的な試み」「中間サイクル」の調整で印刷機をゴロゴロと鳴らし続けているため(お金を刷り続けているため)、FRBのバランスシートは新年に至る週にさらに80億ドル上昇しました。
決して量的緩和程度のものではない。類を見ないものだ。
ジェロームパウエル 2019年10月8日
FRBのバランスシートは現在、4.174兆ドル、つまり米国のGDPの19.4%の資産を保有しています。 これは14か月で過去最高レベルであり、過去4か月だけで4,140億ドルの急増です(2019年8月の安値以降)。

FRBのバランスシートが過去4か月のペースで拡大し続けると(月額1,000億ドル以上)、4月までに史上最高額を更新します。これが株式評価に何をもたらすかを結論付けるのはあなたにお任せするとしましょう。
明らかに、流動性(の欠如)との戦いをしているのはFedだけではありません。 ヨーロッパ(VGK、EZU、HEDJ、FEZ、IEUR、BBEU、IEV)と日本(EWJ、DXJ)の2人の戦友が公平なシェアを果たしてくれています。
これをみてください。日本銀行は現在、すべての未払いの日本政府債務の43.9%を保有しています。
この非現実的な所有レベルは、2008年の「わずか」8%から上昇しており、日本の債券市場は非効率と言わざるを得ないでしょう。

ECBに関しては、5年以内にバランスシートが135%上昇したことにより、ユーロ圏のGDPと比較した総資産比率は過去最高の40.6%になりました。 日銀の約44%の比率をまだ脅かしてはいませんが、主導権を握ることに向けて非常に「良い」進歩を遂げています。

この時点で、FRBは実際には3者の中で「理由のある成長」であり、ある程度はそうであると思いたいところです。 しかし、3つの主要な経済ブロック(米国、ヨーロッパ、日本)のそれぞれが抱える債務負担を思い出すと、責任を負うことは相対的なものになり、絶対的な理由にはなりません。
下:2018年のG20諸国のGDPに占める政府債務と2024年の予測。

Big-3に関連するデータが十分でない場合は、もう1つ、別の中央銀行を見てみましょう。イングランド銀行(BoE)は、4つの銀行の中で最小であるにもかかわらず、時間枠を長くとった場合で、恐らく最も衝撃的な例と言えるでしょう。
現在の金融政策がどれほどまれで例外的であるかを確認した場合は、1700年以降のイングランド銀行のバランスシートをGDPのパーセンテージとして示した下のグラフをご覧ください。

物事を正しい視点、つまりはチャートの形であらわしており、これは警戒レベルと言っていいでしょう。
さて、私たちが最後にやるべきは、すべての点と点、つまりバランスシートを、グローバルなストーリーを導く1つのチャートに集約することです。 そしてそうすると、G-4中央銀行(FRB、ECB、BoJ、BoE)の総バランスシートがGDPのパーセンテージとして見られ、1990年代初頭のほぼゼロレベルから2019年末には36%に移行するのも不思議ではないのです。

最後に大事なこと
大きなバランスシート=高い株式のバリュエーション
この方程式が実際に存在し、投資方針はFRBのバランスシートのサイズに従うだけでよいことを説いてきました。
話題を少し変えて、お金を刷りまくって来たことについて、金銭的な狂気が実体経済に与える悪影響について話をして終えましょう。
なぜなら、株式市場とは異なり、実際の成長に関して物事はそれほど単純ではなく、全く勇気づけられるものでもありません。
この三部作の冒頭の部分で提示したチャートと単語に戻りましょう:
全米産業審議会の先行経済指標は、流動性/勢い主導の株式市場の手持ちなしで、現在はマイナスY / Yです。
金融経済、つまり史上最高値近くで取引されている株式と実体経済、つまり実質成長率がわずか1%(そして減速中)であるという(すでに広い)株価と経済の断絶は、拡大し続けています。

しかし、懸念されているのは金融と実体経済の間の断絶だけではありません。債務と成長の断絶も同じように懸念されるものです。
より多くの債務がより多くの成長につながるという仮定は常にありました。そして、私たちが膨れ上がる債務の負の結果を無視するならば、それは単純な話になります。
しかし、Fedと同じくらい債務を膨らませると、経済学で最も古い法則の1つである限界収穫逓減の法則が機能するようになります。
この原則は、1単位の生産要素で利点が得られると、生産が増加するにつれて限界生産性が通常低下することを示しています。これは、通常、生産される出力の追加単位ごとにコストの利点が減少することを意味します。(※例:1杯目のビールは美味しいが、2杯目、3杯目と飲むにつれ美味しさの価値が少なくなっていく現象)
債務と成長の関係についても同様の影響があります。当初、より多くの債務が実際に成長を刺激しました。しかし、時が経つにつれ、より多くの債務が経済成長に与える影響は減少し、同じレベルの成長を達成するためには、より多くの債務が必要になりました。
次のグラフは、この問題を示しています。債務の水準が高まっているにもかかわらず、成長率が加速していないだけでなく、実際には低下しています。

この理由は単純です。巨額の債務を処理するコストが非常に高くなっているため、余分な/限界生産/成長がこれを克服することは不可能になってしまったのです。 別の言い方をすれば、より多くの債務が治療法ではなく毒になりつつあります。
公式のFedのデータでさえ、過去10年間で、米国が11兆ドル近くの新規債務を追加したにも関わらず、GDPは7兆ドルしか増加できていないことを見ても、この説を支持することができます。
言い換えれば、過去10年間で、1ドルの成長を生み出すために、1.5ドルを超える追加の債務を発行する必要がありました。割のいい話ではないですよね。

さらにはっきりとわかるように、21世紀の最初の10年間で成長(赤線)は債務(青線)よりも速く上昇しましたが、直近の10年間では、青線は赤よりもはるかに速く上昇しました。これらのギャップは拡大の一途をたどっています。
別の言い方をすれば、今日、1ドルの成長を得るためには、FRBは「ちょうど」1.5ドル以上の新規債務を発行する必要があると言っても過言ではありません。それは割に合わないだけではありません。これは、経済的に自殺的ではないとしても、今では非常に危険な動きなのです。
おわりに
現在の金融政策に関しては、物事を複雑に考える必要はありません。 Fedはリスクの高い資産を購入するように指示していないかもしれませんが、Fedの行動は量を物語っており、非常に明確なメッセージを伝えています。
どの投資家にも2つの選択肢があります。
- 物事を複雑にし、現在の金融スタンスを考えすぎて、将来の米国経済が待つ負の結果に焦点を合わせ続ける選択
- 物事を単純化し、現在の金融スタンスをそのまま受け入れ、Fedが進路を変更したときに何が起こる可能性があるかに今は焦点を当てないようする選択
(※ちなみに今が進路変更の帰路に立っている状態です)
2019年ほどFedが投資家にとって大親友だった年はありません。2020年は追って通知があるでしょう。 2008年や2009年でさえ、この王冠を授かることはできないのです。なぜなら、それらは、FRBに緊急行動を要求し、強制した年だったからです。
つまり、下のグラフをよく見てください。これは本当の友達の振る舞いではないですか?

Fedが市場を20%も下落させてきた年とは異なり、2019年はそのような「頼りどころのない年」ではなく、ジェローム・パウエル&カンパニーは彼らが行ったことのないほど、驚くほどに積極的にコースを逆転させた年なのです。
これぞ本当の友達というものですよね。
長文をお読みいただきありがとうございました。
これは2020年の年初にFedが2019年からの金融緩和に移行したときの記事でした。
さて、現在のトレンドは「金融引締め」。今回のFOMCで注目されているのはFedの膨れ上がったバランスシートの縮小についてです。
FOMCでこのQTについてタカ派(緊縮姿勢)な意見が示されれば市場はより下落方向に、ハト派(緩和/穏健姿勢)な意見が出れば市場は好感して一時的に上昇すると思われます。
是非注目してみてくださいね。
最新のイールドカーブの形状比較を置いておきます。FOMC後にこのカーブがどのように変化したかを今後読み解いて行きたいと思います。お楽しみに!

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