今週(3月第4週)に入り逆イールドの話題が多くなりました。
少し基本的なお話をしましょう。通常債券の利回りとは、短期が低く長期が高い構造になっています。何故か。
単純な話ですと、短期はリスクが低く長期になるにつれて高くなるからです。つまり、「明日お金返すね」と言われれば債務者が夜逃げしない限り戻ってくる確率は高いでしょう。
では、「10年後お金返すね」はどうでしょうか。1日の保証もないかもしれませんが、10年先は不確実性だらけです。それでも債務者は10年分のお金を調達したい。そんなときには金利をのせて債券を発行してお金を調達するわけです。(ここではデュレーションによる価格変動については割愛します)
下記はTwitterでおなじみたりたりさんの作成してくださった米国の債券利回り推移になります。ツリーのお話も是非参考にしてみてください。

上記の表を見てみると、青色の10年債利回りに対して灰色の2年債利回りが22年1月以降大きく上昇しており今にも追いつこうとしている図です。つまり、2年債利回りと10年債利回りの逆転現象、逆イールドが今にも発生する可能性があることを示しています。
そして実際、この記事を書いている今現在、2年債と10年債で利回りが逆転し逆イールドが発生しました。逆イールドは、景気後退のサインとして債券マーケットでは最も恐れられているものといっても過言ではないでしょう。
歴史を振り返ると、逆イールドが現れるとその後11ヶ月~25ヶ月後に景気後退期が訪れているのです。逆イールド発生から景気後退までの期間は平均すると2年2か月で、景気後退がいつくるかを予測するには判断材料としては乏しいものになります。


実は逆イールドと景気後退の間に科学的な根拠は未だ示されていません。
しかし市場関係者は先行きの判断材料として重要視している部分も大きく、FRBも逆イールドの重要性を心得ています。
筆者としては、市場関係者が最も参照する逆イールドに対してもFRBは配慮する意向があると予想していたのですが、長引くインフレに断固として戦うタカ派な姿勢をより強めた結果、この年限の利回りの逆転現象が起きました。それは下記の発言からも伺えます。
FRBのパウエル議長は0.25%の利上げを決めた16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で「米経済は非常に力強く、金融引き締めに対応できる」と述べ、利上げへの「耐性」を強調した。21日の講演では急激な利上げでも景気後退に陥らなかった1965、1984、1994の各年を例に挙げ「景気後退が過度な金融引き締めによって起こされるものではないのは明らかだ」とまで言い切った。
日本経済新聞
FRBがこのように強気に利上げを進めるわけはインフレ退治はもとより、当てにしている指標が別にあるからだと考えていいでしょう。
今回はこの逆イールドについて振り返り、FRBはどのように見ており、今後どのように変化していくか考察してみたいと思います。
逆イールドで景気後退が起きる?
金利を決定する要因は複数ありますが、基本的に2年債などの短期金利はFRBの決定する政策金利(FFレート)の影響を強く受けます。長期金利は市場参加者による将来の見通しによって需給が成立し、形成されます。
市場が将来の景気後退を予測することで、短期金利よりも市場の影響を受けやすい長期金利が低下、もしくは大きく上昇せず、一方政策金利に影響されて2年債などの短期ゾーンの利回りが上昇すると、逆イールドが発生します。つまり、逆イールドの発生は将来の景気後退観測が市場参加者によって形成されていることを意味し、それ故に景気後退の兆候とされているのです。
逆イールドの発生自体が景気後退をもたらすというわけではなく、市場関係者の景気後退懸念が形になって表れたと考えていただければと思います。
しかし、多くの市場参加者が逆イールドを景気後退の兆候と考えているのは間違いないため、逆イールドの発生=投資資金の回収という行動を呼び起こすこともあり、景気後退懸念がより広がります。


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